第8章 教えてくれたのは君だった。
沖田side
「くっ!」
「隊長!」
宗が千里のもとに動いたおかげで沖田の回りに隊員が集まることができた。とはいっても過半数が宗の刀によって殺られてはいたが。
その隊員たちの死を嘆いている暇などない。
斎藤は懐から応急処置の布を取りだし、沖田の腹にきつく巻いた。
しかし、それさえも気づかないほど沖田の視線は千里に縫い付けられている。
近藤も金縛りにあったかのように動けない。土方に至っては避けた体制のまま、呆然と宗と千里を見ていた。
それほどまでに彼女の震え方は普通ではなかった。
宗は突き刺さった刀を抜き、今は彼女の傍に寄り添っている。
背中を優しく撫で、肩を抱くように強く、強く抱き締めていた。
「お前は悪くない。」
後から土方に聞いた話だったが、宗はしきりにそう呟いていたらしい。
そう言って彼女を落ち着かせようとしていたと。
両者の間には何とも言えない空気が流れた。
真選組は宗に手出しをする気にもなれず、宗も千里に付き添ったまま。
捕まえる絶好のチャンスではあったが、彼らの心には今彼女を落ち着かせられるのは彼しかいないという思いがあった。
だから誰も手を出せなかった。
少し経って、千里がかくりと力を抜いた。ハッとして目を見開けば気絶しているようで、目を瞑っている。
宗は優しく彼女を抱き止め、切な気に瞳を震わせた後、唇を噛んだ。
自分のふがいなさからなのか、それとも……。
彼女の肌には幾つもの涙の痕が残っている。
睫毛についた輝くものもきっとソレなのだろう。沖田の胸に鋭い痛みが走る。
何もできなかった。
自分じゃどうしていいかわからなかった。
理解できないという苦しみが沖田を襲う。
心を鎖で縛り付けるようにキリキリと痛み、吐き気がする。
喉が掠れて汗が吹き出て。
それが傷のせいだったということは思わなかった。
__________と、その時。
バコォォォンッッッッッ!!!!!!!
突然、爆発音が響いた。
耳を押さえたくなるような音。
直ぐに爆風と塵が沖田たちを襲う。