第8章 教えてくれたのは君だった。
千里side
……あれが、"雨龍"。
千里は自身の力を解放しながら、彼の化身である彼のとてつもない力を見ていた。
素早い動きも、刀さばきも。
体が宗のものであるからこそ成り立つものとはいえ、人の限界とはあの事かと感じる。
どうしてこんな力を今回に限って使ったの……?
きっと今私が"雪螢"を押さえているようにデメリットがあるはずなのに。
体に負荷は出てくるはずなのに。
そう心の中で思えば、艶やかな声がどこからか響いた。
"貴方を守りたいと思ったからじゃないの?"
ハッとひとりでに肩を揺らす。
耳の奥に聞こえてきた声は気まぐれでありながら自身に力を貸してくれる彼女だった。
_______声をかけてくれるのはひさしぶりじゃない。
"……彼はきっと雨龍に頼んだのね。自分ひとりなら逃げれるけれど貴方を守っていたら逃げれないから。"
千里の問いには答える気はないのか続きを続けた。
"貴方は失ったものも大きいけれど得たものも良いものね、私が雨龍を得たように。"
今度はこちらが黙る番だった。同じ傷を持っているものに同情は野暮だ。
相手も分かっているのか返事を求めない。
しかし代わりに彼女は質問してきた。
"貴方はどうする?援護するのかしら。"
顔が見えていたのならとても美しい女だと感じさせる綺麗な声。
千里は唇をあげて笑う。
優しくありながら力強く。
______当たり前、力貸してよ?
千里は淀みなく答えた。
_______まぁ、体は乗っ取らないでほしいね。
その答えに満足したのか刀に施された雪の結晶が強く浮かび上がる。
その事を確認してから沖田の援護にいこうとしている土方に襲いかかった。
_________余所見は良くないよ。
土方さん。