第8章 教えてくれたのは君だった。
沖田side
カッと辺りが銀色の光によって弾けた。
眩しさに目を細める沖田。
すぐにその光は消えたが、余韻が残った瞳に暗闇が一瞬写る。
雰囲気を、空気を感じろ…。
沖田は目には見えない敵を察知しようと、視覚ではないものに頼ろうとする。
しかし誰も動くような気配が感じられず、自分だけではなくみんなが同じ状況なのだと確信を覚えた時。
少しずつ色がつく風景に違和感を覚え始めた。
舞い上がった埃がまた床に落ち、視界は開けていく。
真っ白な髪。
白磁の肌に、生気を感じられない白い瞳。
色と言う色をなくした女がそこに佇んでいた。
辺りの空気は冷やされ、吐く息は白い。
それでも背筋に走る寒気は冷たさだけの問題ではないと沖田は思いながら。
「千里……?」
風貌は変わり果て、本当の氷のように冷たさを纏った女の名を呼んだ。
どの力が働いたのか。
作用も、からくりも、原因も、過程も、何一つわからない。
それでも沖田は目の前の女が紛れもなく千里だという確信があった。
「返事はしねぇよ。」
その声にハッとして振り替えると宗が真剣な表情で語りかけていた。
「言葉なんて口にしたら飲み込まれちまう。」
「……どういうことでィ……。」
「今あいつの中にあるものは憎しみだけを糧に生きてきた雪女の魂だ。全てを喰われるかもしれないのを必死に押さえてる。やれることは、人を殺すことだけ……。」
ふっ……と彼の瞳からも生気が抜けた。
「仇をとるためにだけしか動きません。」
瞬間、少年のような声に彼の声が変わった。
口調も彼のものとは思えないほど綺麗なもので。しかしその裏に潜む不気味さは宗を凌駕するものだった。
「テメェ……誰だ!!」
「名乗る必要など有りません……彼が変われと言ったので変わってあげただけです。」
「意味がわからねぇ、説明しやがれィ。」
「殺せと言われたのですよ、貴方達を。」
ダンっと言う音と共に床から飛び上がる宗。
人間の脚力ではあり得ない高さを飛び上がる。
回転をしながら速度をあげて刀を振り回し沖田に向かって落ちてくる。
「ぐっ……!!!!」
加速度を加えた彼の体は重く、沖田でさえ受け止めるのが精一杯だ。
「分かるように言い換えましょう。」
先程の続きか、彼が言う。
いや、この場合は"A"とでも名付けよう。