第8章 教えてくれたのは君だった。
沖田side
ガキィィィンッッ!!!
鋭い音がその場に響く。
お互いの顔が近付き、視線が交わり合う。
沖田はひとしきり相手を睨み付け、大きく舌打ちをした。
こいつ、やりやがる。
そんなことをひとりでに思いながら沖田は躊躇うことなく宗の体に刀を貫ぬこうとする。
通常であれば血飛沫が上がるところだが、彼は意図も簡単に避けた。
「やるじゃねぇか。」
思わず声に出た言葉はちゃんと相手にも伝わったようで、宗は含み笑いを浮かべている。
「喧嘩を買うくらいだ、少しくらい楽しくねぇと。」
「確かに、もしこれで雑魚だったら見栄っ張りもいいとこでィ。」
軽く相手の刀をいなし、回り込む。
もちろん相手もそれを予測しており、また宗と沖田は一直線上になった。
「ここまで刀が当たらない相手は逃げてばっかりの桂以外じゃ初めてですかねィ。」
「誉めてんなら有り難くその言葉受け取っとくぜ。」
また、刀が交わる。
黒髪が二人の間で起きる風に揺れ、塵は舞い上がった。
紫色の柄を持つ刀と黒い柄を持つ刀が互いの刃を削りあっていく。
隊員たちはこの戦いに恐れおののき入っていけない。
入る気も最初からなかったが。
それでもいつ決着がつくのか、どちらが勝つのか、それが決まるまでは一瞬も気が抜けなかった。
一方の沖田は勝つことなど千里を取り戻すことの二の次だった。
負ける気など更々ないが殺す気もない。
だが、第一優先は彼女だ。
横目で彼女を確認すれば、土方に押されているのが目に入った。
息が少し上がっているようで、額の汗を時々ぬぐっている。
時が来れば彼女は膝をつく。
土方もそれをわかっているはずだと、沖田は確信していた。
さて、こちらを片付けるとしますかねィ。
沖田は唇をつり上げ、心の中で呟いた。
しかし、そんな淡い希望はすぐに打ち砕かれる事となる。
_________第一優先は千里。
_________殺す気はない。
それは所詮最善策。
彼の前では雨宮宗の前ではそんなものは通用しない。
「……さて……。」
彼の髪がゆっくり紫がかかった白髪に染まっていく。
「帰りますか。」