第8章 教えてくれたのは君だった。
千里side
「作戦は変更なワケ?真選組と遭遇したら戦わないってのは。」
皮肉たっぷりの声色で聞けば、
「変更だな。」
と、悪びれる様子もなく宗は言う。
その態度に呆れと興奮を含みながら、千里は刀を構えた。
「総吾は任せていい?」
正直今の総ちゃんとはやりたくない。
それを知ってか知らずか宗は不適に微笑む。
勿論視線はすでに沖田に向けていた。
「むしろ派手に喧嘩売られたんだ。」
ガチャっと独特の鈍い音がその場を支配する。その刀を持つ彼は完全に引き金を引いたようだった。
「売られた喧嘩は買う主義なんでね。」
そういうが否や宗は地面を蹴り、沖田に突進していく。ざり、と畳が向ける音がした。
千里は逆に入ってきた方に刀を向ける。
すると、一人の男が飛びかかってきた。反射的に刀で刀をうけとめると、目の前には口元を黒い布で覆った鋭い眼光を放つ男がいる。
こいつがこちら側では一番の手練れか。
直感的にそう感じた千里はもうひとつの刀を取りだした。
左手に持った刀を彼の足をめがけて突き刺そうと試みる。
しかし彼も一歩後ろに下がり、刀を構え直した。千里は唇を結び、間合いを積める。
その早さに少し驚いたような顔をする彼。
しかしその間にも千里は右は首に、左は腹を狙ってどちらかが当たるように振り抜こうとする。
彼はすぐに思い直したのかくないをとりだし、両方を受け止めた。
鉄と鉄とがぶつかる鈍い音が耳障りに響く。
「名前は?」
一種の興味本意と、相手の動揺を誘おうと試みる千里。
しかし彼は沈黙する。
こちらの意図が読めているのか。
そう怪訝に思った瞬間、不意に後ろに殺気を感じ、上に飛ぶ。
視界に映ったのは黒い髪と、見慣れた瞳。
「ちょっとやめてよ、土方さん。」
一回転して着地し、刀を振り落とした本人に悪態をつけば、彼は瞳孔が開いた目をこちらに向けた。
「こいつの名前は斎藤だよ。これだ満足か。」
「それはどうもありがとう。」
こちらの思惑も、興味本意も気付かれてる。
さすが長い時間を共に過ごしたことだけはある。考えが筒抜けだ。
千里は心の中で舌打ちをした。
まぁそれは、こちらにも使えるけど。