第8章 教えてくれたのは君だった。
千里side
何が起きたか分からない、目の前の男達はそんな表情を浮かべた。
目の前に転がっているのは黒い服を着た隊員の死体と血飛沫を浴びた畳。
どこから何が起きたのか。
ただただ困惑し彼らは金縛りにあったかのように動けない。
その一瞬は命取りだ。
千里は唇を緩めると、混乱に乗じて足に力を込め、外側にいる隊員を一人斬った。
「しまっ……!」
そんな声が微かに耳を捉えるが関係ない。
先は峰打ちだったが今回は違う。
「ごめんね、今私機嫌悪いの。」
ぱっ、と目の前の男の血飛沫が空にあがる。
それを適当に避けながら、また距離をとった。
宗と背を合わせて宗の鼓動を感じる。
彼はなお、笑っているようだった。
「何がおかしい!!!」
千里が斬った隊員と、何らかの作用で絶命した隊員を数人が囲む。
仲間をなくし、殺害した本人が笑っている。気持ちのよいものではないだろう、憤慨しているのか土方が声を荒げた。
しかし宗はまた笑う。
子供のように無邪気でありながら、嘲けるような笑い方は異常というより他ない。
「千里……いいな、コイツら。おもしれぇ……。」
目を狂喜で満たしながら、自分の本能にしたがって笑う。
眠っていた、否、眠らせていた獣が目を覚まそうとしていた。
危険ゆえに普段は出さない、禁忌のチカラ。
「楽しませてくれよ。」