第8章 教えてくれたのは君だった。
沖田side
やっと見つけた。
彼女を目の前にして一番最初に思ったことだった。
刀を構え入ってきたとき絶望したが、それでも見つけられた喜びが大きくて。
もう逃がしたりなんかしない。
心の中でそう唱えて瞳に、全身に力を込める。
千里は狼狽えているようだった。
まさか桂との繋がりまでバレていたとは思ってもなかったからだろう。
それでも宗という男の前から動かないのは、彼にたいしての絶対的信頼があるからに違いないのだ。
あぁ……。腹がたつ。
瞬間、沖田の顔から全ての理性が消え失せた。まるで飢えた獣のよう。
低く唸るような声で言葉を紡ぐ。
「土方さん……俺にアイツ
__________________斬らせてくだせェ。」
そういうと同時に刀を取りだし、構える。
毎日手入れし、珍しく鍛練もつんだ。
何一つ妥協なんかしていない。
本気に染まった沖田を見て千里の刀に震えがはしる。
怯えと驚きと哀しさと、すべてが混ざりあった複雑な表情を浮かべながら。
「……やれ、総吾。」
土方も覚悟を決めたのか、それとも本気なのか、厳しい声を放つ。
沖田は一度首をたてにふると、全神経を集中させた。
____殺すな、捉えろ。
出発の前近藤がいった、一つの願い。
命令ではなく願いだといった彼の言葉が思い出される。
雨宮が死んだら千里は立ち直れない。
確信を持った言い方だった。
ならばそれに従わない理由はない。
近藤の言葉を反芻する。
そして浅く息をはき、目の前の黒髪の男を睨み付けた、その時。
「くっ……あははははは!!!!」
突然、目の前の男が笑いだした。
ただただおかしそうに。
高らかな力強い笑い声が雨のなか響く。
突然のことで戸惑う真選組。
千里も目を丸くし、驚いている様子で。
壊れたカラクリのように。
母をなくした子のように。
異様な雰囲気を纏ったまま笑い続ける彼は_______全員の背筋を震わせた。
止まらない笑いにいつ息をしているのか疑問に思うほど、彼は長い間笑っていた。
どれほどたっただろう。
突然、笑いは途切れた。
パンっ!
しかし代わりにその空間を裂くような甲高い破裂音が鳴り響く。
束の間の安心はそこですべて吹き去った。