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黒バス短編

第2章 はた迷惑な晩餐


「花宮も食べ」
うまいで、と笑う今吉に仕方なく席についた。とやかく言っても腹は減っている。
「ちゃん、花宮の分な」
なんであんたが仕切ってんだ、そもそも人の嫁を気安く名前で呼んでんじゃねぇよ。心の中で毒づきながらも皿を取った。
「真くん、これおいしいよ」
がニコニコしながら、花宮の持つ皿に肉やら野菜やらどんどん盛ってくる。
人の気も知らないで本当お前バカ、と彼女を見るもには伝わらない。しかし今吉には伝わったようだ。
「ちゃーん、ワシにもー」
「このっ、妖怪」
からかうような口調の今吉に、箸を持つ手も力がこもる。
「おー、怖い顔して、悪童が」
もっと楽しゅういこうや、どこかで聞いたような台詞を口にする今吉。
「ちゃん、花宮にビール出したってな」
「だからお前はここの主じゃないだろっていうかさっきから気安く用を言い付けてるその女は俺の嫁だ!」
我慢の限界とばかりに、バンッと箸をテーブルに叩きつける。肩で息をしながらふと我に返ると、笑いをこらえる今吉と顔を赤くしたが花宮を見ていた。
「…なんて言うかよ、ばぁか!」
「いや言ったから。真くん、嫁って言った」
「実際、嫁だろうがよ!バカ、本当お前バカ」
「あの、2人ともわしのこと忘れてへん?」
主旨がだいぶずれてきた夫婦のやり取りに、ポツンと取り残された今吉である。

「ごちそうさまでした」
半ば自棄になった花宮と食事を続け、「本当帰れ!」と怒鳴られるまでに今吉はデザートのアイスまでちゃっかりと堪能していた。
玄関先で靴を履き、花宮に手招きをする。
何だよ、と面倒くさげに言いながらもたたきに降りてきた花宮と外に出る。
「わし、学生時代から花宮に劣った所なんかひとつもなかったけどな」
只でさえ不機嫌な花宮の顔がさらに歪むのを、まぁ聞けやと手で制した。
「でもな、あの可愛いちゃんが嫁さんなんて、わし負けたわ」
仲良くせぇよと囁き、ほななーと今吉はさっさと去っていった。

居間に戻ると、が後片付けをしていた。
「お前、もう俺のいないうちにあいつ家にいれるんじゃねぇぞ」
素直に頷くの頭をくしゃっと撫でれば、彼女からえへへと笑みがこぼれた。
「ったく、言われなくてもわかってるんだよ」
花宮はそっと呟いた。
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