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黒バス短編

第2章 はた迷惑な晩餐


帰宅すると、玄関に見知らぬ男物の靴がきちんと揃えて置いてあった。
身内が来ているのか、そうだとしたらが連絡のひとつくらい寄越しているはずだ。まさか自分の留守の間に男を招き入れるほどバカな女ではないはずだが、と花宮は盛大に舌打ちした。
「あ、お帰り」
ちょうどその時、が姿を表した。舌打ちが聞こえたはずはないだろうが、靴を見下ろす花宮の不機嫌な表情には眉をひそめた。
「連絡貰ってないの?」
誰にだよ、連絡なんかひとつも来てねぇよと口に出そうとした瞬間、「お帰りーぃ」と廊下の向こうから声がした。
聞き覚えのある声に嫌な予感しかしない。
柄にもなく後退りすると、扉から顔だけ出してヒラヒラ手をふる今吉の笑顔が見えた。

「痛い痛い!いたいってば!」
着替えを済ませリビングに取って返した花宮は対面キッチンに立つの頭を思いっきりつかんだ。
何とか振り払おうと必死に頭を振るを物ともせず、このバカ女と罵る。
「なんで、あいつが、ここに、いるんだ」
一言ずつ区切って問いただせば、は既になみだ目である。
「だって今吉さん、真くんに連絡したって。
それに今吉さんは先輩じゃん」
私の先輩でもあるし、真くんの先輩でもあるじゃん、と抗議するに、それは理由になってないだろと返す。
「それにお肉持ってきてくれたんだよ」
「だからそういう問題じゃねぇ、ばぁか」
「まぁまぁその辺にしとき」
ごめんなぁー、連絡したつもりが送れてなかってん、とテーブル上のホットプレートをセットしながら今吉が諫める。
「花宮もあんま嫁さんいじめたらあかんで」
逃げられるで、とにやにやする今吉を出来ることなら今すぐ追い出したい。連絡だって最初からしてないに決まっている。
「何しに来たんですか」
「可愛い後輩たちにも結婚式以来、会ってないからな。仲良うしとるのか心配で」
だから今揉めてる原因を作ってるのはあんただと、まったく余計なお世話である。
「ご心配頂かなくてもうまくやってます。ホントお願いですから帰れ…ください」
「そんなつれないこと言わんで飯食おうや」
どこ吹く風の今吉に、花宮の手から逃れたまでもが「お肉ですよー」などと準備を進めている。
何を言っても無駄な2人にもう一度舌打ちをした。
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