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黒バス短編

第1章 その先のこと


金曜の居酒屋は賑わっている。
店員に笠松の名を告げて案内されたのは奥の個室で、仕切りがわりの暖簾をくぐるとすでに懐かしいメンバーの顔が揃っていた。

「野郎の集まりにしては、仰々しいプライベート空間だな」
森山が挨拶がわりに片手をあげて笑うと、笠松も片手をあげて応えた。
「仕方ねーよな、噂のキセリョがいるんだからよ」
すでにさっき店員がチラ見してたぞ、と小堀が付け足すと、黄瀬がてへっと効果音が聞こえるかのように笑った。
「今日みんなのキセリョはお休みなんすけどね!」
すかさず、調子にのるなと笠松が黄瀬の背中をバシッと叩く。相変わらずだなと笑っていると、中村がメニューを差し出してきた。
「とりあえず飲み物と食い物頼んじゃいましょうよ」
「お(れ)、こ(れ)食いたい!」
早川がメニュー表を指差したのをきっかけに残りのメンバーも好きに注文を始めた。

ビールと共に会話も弾み、料理があらかた片付き腹も膨れたところで黄瀬が話を振った。
「そういえばっちは元気っすか?」「結婚式以来会ってませんね」
中村とそして小堀も話題に入ってきた。
「学生時代はさんにもほぼ毎日会ってたのにな」
あの頃は森山が練習見に来てと頼み込んでいたこともあるが、練習後によくこのメンバーと彼女で帰宅したし時には寄り道もしたものだ。
「俺、あいつとなら何とか話せてたな」
笠松が笑ったが、ほぼ笠松から単語のみの返答で会話という会話ではなかった気がする。
「今日さんも一緒に来れば良かったのに」
「久しぶ(り)に話したかったです!」
そうすれば野郎の中にも花が咲いたのに、と全員から非難めいた目を向けられ、森山は咳払いした。
「いや一緒に来ようかとも思ったんだよ。ちゃんも皆に会いたいって言ってたんだが、そういえば一人だけ名指しで小堀に会いたいって言ったな」
瞬間、小堀の頬が確かに緩んだ。
「そこ、にやけた顔するな。でも優しい彼女は、積もる話もあるだろうからゆっくり楽しんできてって」
森山の顔がだらしなく緩み、全員がノロケかよと呆れた顔をした。
まぁ体調の都合もあったんだけど、と小声で付け足したがそれは聞こえなかったようだ。
「それからお前ら、今はじゃなく森山だからな」
わかってるっすよと黄瀬に続き、もうお前帰れと笠松の声も飛んだ。
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