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黒バス短編

第1章 その先のこと


「ただいま」
大きな音を立てないようそっとリビングに入ると、おかえりと返事があった。
予想に反して返事があったことに驚いていると、ソファから体を起こしたが寝起きらしくぼんやりとした表情でこちらを見上げた。
「具合悪いの?大丈夫?こんなところで寝たら風邪引くよ。それにソファから落ちてお腹ぶつけたりしたら危ないよ。先に休んでて良かったのに」
慌ててソファの傍らに膝を付くとの手を取った。顔色が少し悪いような気がするし、微熱があるのか手も熱い。
まっすぐ帰ってくればよかったねと言えば、
が笑った。
「病気じゃないんだから。慌てすぎだよ」
その顔がかわいい、いやいつもかわいいんだけど。距離をもっと縮めようと体を伸ばしての肩に手をおいた。
「由孝くん」
お腹に体重をかけないよう体勢に注意しながら、小さく囁かれる声にさらに近づいた。
しかし、本当にあともう少しというところで突然が口許を覆う。
「お酒くさい」
「え?あっ、ご、ごめん」
慌てて離れる森山に目をくれることなく、うっと呻いたはトイレに駆け込んで行った。
しゃがみこむ彼女の背を擦り、顔を近づけないように大丈夫とごめんを繰り返すしか術のなかった森山は、もう大丈夫とが寝室に入っていくのを見送ってから「シャワー浴びてきます」とすごすご退散した。

「皆、元気だった?」
シャワーを浴び寝室に戻ると、が横になりながらこちらを見上げていた。
「は来ないのかってうるさかった」
今は森山なのにさ、不満な表情をしてみせると笑い声があがる。
「私も皆、それに小堀さんに会いたかったな」
「この前もだけど、なんで小堀なの」
「だって底なしの受け皿だよ」
「俺だっていくらでも受けるよ」
変わらず不満な表情でベッドに入ったものの、が側に寄ってくるものだからたちまち顔は緩んでしまう。
「もっと落ち着いたら皆に会おうな」
うん、と彼女が頷いたのを見て、ふと帰り際の黄瀬の耳打ちを思い出す。

「体調良くないって、もしかしてっち、おめでたっすか」
ご報告待ってるっすよと、にやにやした黄瀬の表情が浮かんで、その時を思いながら目を閉じた。
あいつら、絶対驚くだろうな。


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