第5章 【今吉】カカオとルージュと
日曜日。
私は出来るかぎりの大人っぽい格好をして出かけた。
胸元が大きく開いたカットソーに、ハイウエストのミニスカート。髪の毛はアップにしてバレッタで止め、この間買った口紅、マニキュア、香水の代わりに好きな香りのコロンをつけた。
これが、私に出来る精一杯の『大人のふり』。
待ち合わせの場所に行くと、そこには既に今吉先輩がいた。
…どうしよう、凄くかっこいい。
特に変わったことをしていないのに、めちゃくちゃかっこよくて…思わず言葉に詰まってしまう。
私、今吉先輩と釣り合ってるかな?急に不安になってきた。
…ダメだ、こんなんじゃ大人だとは言えない。大人なら、常に余裕がなくちゃ!
『お待たせしてすみません、先輩』
「いや、今来たところや。そんじゃ、いこか」
『はい』