第5章 【今吉】カカオとルージュと
それから1週間、私は必死に頑張った。
学校に口紅はつけていけないからそこは色付きリップで代用したけど、おやつはカカオが多めのチョコレートにするとか。とにかく『大人』っぽいことをたくさんした。
もちろん、マネージャーの仕事もいつも通りこなした。
この1週間はマネージャーの仕事で今吉先輩と関わることが多くて、それがとっても嬉しかった。
でも、よくよく考えてみれば、口紅とか、好きな食べ物とか…学校生活じゃわからない…よね?
ましてや今吉先輩とは学年も違う。一緒にごはんを食べているわけでもないんだから、絶対に気づかれてないだろう。
どうすればアピールできるんだろう…
『あ、そうだ。2人で出かければいいんだ!』
今吉先輩、この間見たい映画があるって言ってたし、今度の日曜はちょうど休みだ。それを口実にすればたぶんいけるはず!
そうとなったら、即行動。私は今吉先輩のところを訪れた。
『今吉先輩』
「おん?…なんや、悠紀やないの。どないしたん?」
『先輩、見たい映画があるって言ってましたよね?日曜日、一緒に見に行きませんか?』
「それって、2人でか?」
『……?そうですけど』
首をかしげて頷くと、今吉先輩は笑った。
「ククッ…ああ、すまんすまん。ええよ。行こか」
『ありがとうございます!』
やった、嬉しい!
私は待ち合わせの時間と場所を伝えて、礼をして走り去った。