第4章 【赤司】ドルチェブラッド
「ねえ、知ってる?征ちゃん」
ある日、実渕玲央がとある噂を仕入れてきた。
その噂とは、我が洛山高校バスケ部のマネージャーの一人である、1年白川悠紀が吸血鬼である、という馬鹿げたものだ。
「なんでも、見た人がいるらしいのよ…。最近、貧血で倒れる男子が多いらしいじゃない?その内の1人が倒れたとき、近くで白川さんが口をぬぐって…そのとき、見えたんですって。白く光る、キバが」
おどろおどろしく話す実渕に、赤司は少し苛立つ。
「馬鹿馬鹿しい…。そんなものいるわけないだろう」
「 私だってそう思うわよ!でも、そのせいで男子たちが騒いでて…どうも練習に身が入ってないみたいなのよ。それにあの子、確かにそういう雰囲気のところあるから」
噂の主である白川悠紀は、肩甲骨ほどまでの黒い髪と、青白く見えるほどに白い肌が特徴の「絶世」という言葉がぴったりの美少女だ。
そんな容姿に加え、彼女は日光に弱いらしく、いつも長袖。外に出れば体調を崩してしまいがちな体質持ちだ。
それでは無理もないな、とさすがの赤司も思う。
「だから大事になる前に、征ちゃんの耳に入れておこうと思ったのよ」
「はぁ…。わかった。考えておこう」
面倒だがしかたない。これを期に悠紀へのいじめが始まったりした日には、バスケ部まで影響が及んでしまう。
赤司がこの話に関わったのは、そんな程度の考えからだった。