第7章 夜陰の逃避行~思わぬ酔宴
「っ!?」
驚く○○をよそに、蜂須賀は大倶利伽羅の前に仁王立ちし。
「尚も主に酒を唆すとはどういう魂胆だ!?」
自らの本体(刀身)を構えんばかりの形相で息巻く蜂須賀に、しかし大倶利伽羅は、くっ、と喉奥で笑う。
それが蜂須賀には尚更癪に触ったが、その意味するところは、薬研と前田によって明かされた。
「こいつはただの水だぜ、旦那」
「あ、本当です。普通のお水ですよ、主君」
はい、どうぞ、と前田から改めて柄杓を与えられた○○は、嬉しそうに頷きながら喉を潤している。
そんな光景を前にした蜂須賀は、何とも引っ込みがつきかねたが、早合点したのもまた事実で。
(こいつが紛らわしい真似などするから)
そんな思いには、とりあえず、ひとまずは蓋をした。
自分は近侍なのだから。
主の傍近くにある者として、引き際は見極めねば。
蜂須賀は○○の初期刀…近侍という矜持をもって、自らの非を認めた。
「……悪かった。俺が、早計だった」
大倶利伽羅に向かって目を伏せる蜂須賀を、床に腰を下ろした面々が一様に見上げる中、当の大倶利伽羅は数度瞬くと、
「ふん」
肯定とも否定ともつかない面を、明後日に向けてしまった。