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【刀剣乱舞】人ならずとも

第7章 夜陰の逃避行~思わぬ酔宴


こんのすけ曰くの『一日休めば審神者の身体に鍛刀の負荷は掛からない』とは、一般的な審神者を総じてのものだ。

だが蜂須賀に言わせれば、○○は『一般的な審神者』に相当しない。

相変わらず食は細く、眠りは…まあ、最初に比べれば普通に眠れているようではあるが。

いずれにせよ、人間とは、食を怠れば身を損ない、回復能力も低下するという。

刀剣男士としての経験は浅かろうと、それくらいのことは蜂須賀も知っている。
だからこそ、反対したというのに。

それでも、せめて早く床に入り休養してくれるのなら、と蜂須賀が思う、その視線の先では…というと……。

あれから数刻、湯浴み(刀剣男士達とは別に、審神者は自室近くに専用の浴室を持っている)を済ませた○○は常の如く、蜂須賀が夜着と認識する装束とは異なる寝間着(パジャマ)を纏ってそこにいた。

湯上りの女性…しかも己の主であるその姿を、まじまじと見つめるなどという不躾な真似は、無論蜂須賀はしない。

しないが、ふと気になり、ちらり、と見遣った少女の額には、薬研が施した手当は既になく(○○が自分で外したようだ)、赤みも綺麗に失せていて、蜂須賀をほっとさせる。

『大したことはない』『痕も残るまい』と確かに薬研は言っていたが、彼女の額を覆う布を見る度に、実は一日中気になっていた…なんてことは口にしないが。

それはさておき、常の○○は湯浴みの後、寝間着に上着を羽織ってしばらく寛いでから床に入る。

それが就寝までの大抵の流れであり、蜂須賀は近侍として立ち入りを許されている二の間で宿直を務める。

○○の願いによって、二の間にも寝床の支度が整えられているが、蜂須賀がそれを使用したことはなかった。

主の眠る奥の間と、閉じた襖を隔てたそこで、蜂須賀が眠ることはない。

元来、宿直とはそういうもので、まして刀剣男士は眠らずとも何ら問題のない存在だ。

それは、食事も然り。
食べることも、眠ることも可能だが、必要不可欠ではない。

だが蜂須賀の主…○○が、己ばかりが眠ることに苦痛を覚えるように頬を歪めたのは、本丸に入ってすぐのことだった。
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