第6章 監理官の影
「俺はタイマーなのだろう?」
「え?…あっ!」
自ら口にした言葉を、こんなところで蜂須賀に返されるとは思わなかった○○は、ぐっ、と言葉に詰まりつつ。
「……意地悪」
あまりにも小声で嘯いた○○の声は、こんのすけでさえ拾いきれず。
「主?」
蜂須賀も首を傾げたが、○○はそれには答えずに、
「蜂須賀さんて、過保護だったんだ」
これまた極めて声を潜めていたつもり、だったのだが。
「俺が過保護なのではない。主が無茶が過ぎるだけだ」
当人からの思わぬ反撃に見舞われて、○○は反射的に目を見開きながら固まり…けれど。
「無理なんかしてません」
今日だって疲れてなどいないのだ。
それでも、同じ日に何度も鍛刀するのは良くない、とこんのすけも言っているし、何より、自分が鍛刀を行えば、考えてみれば鍛刀部屋にいる式神達を働かせてしまうことにもなる。
それはちょっと迷惑かもしれない、と○○も思ったからこそ、今日の鍛刀は諦めた。
それなのに。
「明後日とか、のんびりしすぎじゃないですか?」
確かに監理官は期日を示してはいないが、だからといって、のんびり構えすぎな気がする。
第一、こんな風に通告してくる相手に、のらりくらりしていて大丈夫なのか。
かえって更に面倒なことを要求してきたりしないのか…なんて、不安やら心配やらが浮上し始めればキリがなかった。
何しろ会ったことのない相手なのだ。
どんな奴かも知れないのに…と、ついぶちぶち不安を洩らす○○と、駄目なものは駄目とばかりに態度を変えない蜂須賀との睨み合いは、対監理官の際にはあれほど頼もしかったはずのこんのすけが、あわあわと必死に仲裁した結果、次の鍛刀は翌日…○○の希望が通る形で決着した。
もちろん、蜂須賀は最後まで不満気ではあったが、一日休めば審神者の身体の負担もない、とこんのすけに太鼓判を押されては、もはや頷くしかなかった。