第6章 監理官の影
政府からの連絡という名のそれは、監理官からの出陣の督促だった。
歴史修正主義者との戦いにおいて審神者と刀剣男士という対抗措置を構築した政府が、審神者の監督監理を任せているのが、この『監理官』という存在である、とは、既に○○も知っている。
監理官は常に複数名の審神者の監理を担っており、管轄下にある審神者に問題があれば、これを指導、統括する権限を有していた。
そして、用件の最後に記された、そこにあったのは。
「シヅキ……?」
呟く○○に、こんのすけが頷く。
「紫城(しづき)殿。審神者様担当の監理官殿の姓でございます」
「私の、担当」
ということは、○○を監理監督する人物ということだ。
その人物が、文面こそ柔らかく、そろそろ出陣なり遠征なりしてはどうか、などと連ねているが、要するにとっとと刀剣男士の練度を上げろ、と言っているのは○○にもこんのすけにも、そして。
「慇懃無礼とは、こういう輩をいうのだろうな」
憮然と吐き捨てる蜂須賀にも、至極明らかだった。
「一見、こちらの状況を気遣うようでいながら、何だこの『貴殿の状況は芳しからず』とは。主は本丸に入ってまだ日も浅いのだぞ」
タブレットに向かっていきり立つ蜂須賀を、こんのすけはまあまあ、と宥めにかかる。
「審神者様が本丸にお入りになってから、まだ日が浅いのは事実でございます。ですが、間もなくひと月が経とうという頃合い。監理官殿にしてみれば、同時期に審神者となられた方々との足並みを揃えたいというお考えもあるのでは……」
こんのすけとしても、それがやや苦し紛れな取り成しだという自覚があった。
監理官の評価は、管轄下にある審神者の戦果によって左右される。
己の評価を上げようと目論む監理官は、その手段として必然的に自らが監理する審神者への要求を増やすというわけだ。
もちろん、全ての監理官がそうとは言わないが。
しかし少なくとも、この『紫城』なる人物は、どうやらそういった類であるらしい。