第3章 出会い-薬研藤四郎という少年
鍛刀を終えた○○が式神達に礼を告げ、部屋を出ようとする頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。
そんな時間の経過を見ていた蜂須賀は、近侍として…なのだろう(と少なくとも○○は感じている)、率先して新たな刀剣男士達を先導するように歩いていく。
てきぱきと動く蜂須賀を尻目に、○○にできることはなく、何やら手持無沙汰になってしまっていた、と、ふと蜂須賀が振り返り。
「主、じきに夕餉の時間だ」
「え?(夕餉って夕食のことだっけ)、ああ、そうかもしれないけど、私ならだいじょ……」
まだ大丈夫だから、それよりみんなを部屋に案内するのが先なのでは…とは、○○が口にすることはなかった(というより、できなかった)。
「主は昼にもあまり食べていなかったろう。鍛刀は疲労を伴うと聞く。まして主は今日が初めてなのだから、しっかりと食事をするべきだ」
だから顕現したての刀剣男士よりも、主の食事を最優先とする。
あたかも当然の選択とばかり、蜂須賀は有無を言わせぬ風情で○○を促した…のだが。
「みんなの部屋に案内するのが先です。私のご飯なんて、いつでも良いんだから」
「良くない」
○○が言い終えるが早いか、きっぱり、と蜂須賀が言い切る。
今の蜂須賀の中では、主の…○○の食事が最優先事項だった。
(そうでなくともあまり食が進まぬ様子だというのに、あんなに鍛刀に没頭するなど……)
できることなら、どれほど途中で口を差し込み、主の鍛刀を止めたかったことか。
けれど蜂須賀がそうしなかった…いや、できなかったのは、主の…まるで何かを振り払うかのような面持ちで鍛刀に向き合う姿が、何処か痛々しいように思えたからだ。
(痛々しい…か、俺は人ならぬものだというのにな)
他の刀剣男士同様、蜂須賀自らも顕現してまだ日が浅い。
人間の機微など、そう知れるものではないと蜂須賀自身も自覚していた。
だがそれでも、何処かしら感じるものはある。