第2章 初めての鍛刀
とはいえ、夢中になると自分では気が付けない、というそこは、○○自身にも如何ともしがたいものがある。
では、どうするか……。
「蜂須賀さん」
「何だ?主」
「あの、私がもしさっきみたいになったら、また止めて欲しいんですけど……」
そこまで言って、○○は宙を見た。
止めて欲しいといっても、具体的にはどうしたら良いだろうか。
例えば一時間経ったら声を掛けてもらうとか。
そんな風にしてもらえたら、上手くいくだろうか。
場合によって、一時間とか二時間とか。
例えるなら、タイマーみたいなものか。
うーん、と唸る少女は心の中でごちゃごちゃと呟いていたつもり…だったのだが、思い切り口に出ていたらしい。
実際に○○が蜂須賀へ相談を持ちかける…より早く、
「なるほど、俺は主のタイマー代わり、ということだな」
「え」
何で…と引き攣る○○の脇で、それまで…恐らくは我慢に我慢を重ねていたらしい新たな刀剣男士の一人、薬研が肩を震わせて笑い出した。
「く、ははっ。なかなか面白い大将じゃないか」
「???」
いきなりの…予想外な方向からの声(しかも笑い付き)に、○○は固まりつつも声の方を見た。
と、そこには、のんびりと壁に凭れ、片膝を立てて腰を下ろしていた黒髪の少年…と言って差し支えないだろう刀剣男士の一人が口の端を微かに歪めながら、真っ直ぐに○○を見つめている。
そのすぐ隣では、彼と同じくらい、あるいはやや年若にも見えるもう一人の少年が、ぴし、と背筋を伸ばして佇みながら、
「薬研、主に失礼だよ!」
そう言いながら、更に隣を揺さぶった、途端、薬研と呼ばれた彼は、すっ、と無駄のない所作で立ち上がった。
「こいつは失礼した。俺は薬研藤四郎。これも何かの縁だ。仲良くやろうぜ、大将」
威儀はしっかりと正しつつ、しかしフランクな物言いな少年と、
「前田藤四郎です。主のお役に立てるよう、頑張ります!」
生真面目に映る少年と、そしてこの部屋で初めて鍛刀に成功した彼と。
○○はこの日、三人の仲間を…いや、もとい。
「……………」
完全に押し黙っている、もう一人。
黒髪に褐色の肌…明らかに不機嫌オーラを放っている彼…大倶利伽羅を含む四名を本丸に迎えたのだった。