第2章 初めての鍛刀
○○がこの世界へと召喚されてから、更に数日が過ぎ。
間もなく二桁の日数が経過しようかという、この頃……。
尚も寝つけぬ夜や、食が細くなりがちという、未だに完全には馴染むに至らぬ(身体的という以上に精神的に)時間を過ごしながらも、○○は蜂須賀と共に、とある部屋に足を踏み入れていた。
一人でも大丈夫(場所もちゃんと覚えていたし)と言ったのだが、
「俺は主の近侍だ。一緒に行く」
いつ如何なる時、不測の事態があってはならない、と生真面目に続ける彼を、○○はどうにも無下にできない。
近侍とは、並み居る刀剣男士の中にあって、最も主の傍近くに仕え、その身を守護する任を負う。
が、目下、○○の刀剣男士は蜂須賀虎鉄のみ、となれば自然、近侍も彼である…のだが。
この近侍なる存在、○○が眠る際にも、何と寝ずの番をするのだと最初の晩に聞かされた時には、正直言って○○は引き攣った。
そんな○○の困惑を不思議そうに見つめる蜂須賀をフォロー(?)に現れたこんのすけによれば、刀剣男士は寝食なしでも問題なく生きていけるから大丈夫、というのだが、しかし。
(私が言いたいのはそういうことじゃなくてっ)
相手が元は刀であるとか、向こうにしてみれば、こちらの性別なんてそもそも意識するにも値しないのかも、とか。
○○だって、そんな風に思おうとはするのだけれど。
やはり見目が、立派な成人男性にしか見えないとなると、なかなか胸中は複雑なものだ。
なのに、絶対に邪魔にならないよう、廊下に侍ることを許してほしい、なんて、どうにも渋る○○を前に、最後には平身低頭までされては、やっぱりどうにも無下にできなくて。
結局のところ、○○は彼の言葉…『宿直(とのい)』というらしい、寝ずの番を受けることになってしまったわけなのだが、それにしたってどうにも申し訳ない上に、○○的にも落ち着かないことこの上ない。
しかも彼は、○○には早く自室で休むよう告げる一方で、自らは本当に廊下で寝ずに番をするというのだから敵わない。
そんなの…落ち着かない以前に、
(蜂須賀さんを廊下に座らせたまんま、自分だけ寝るとかありえないし!)
○○としては、そこに尽きる。