第12章 絡まった想い[下]
『...成功ね。恵は私のものになった』
璃央の声に眉をひそめる
(成功...?)
『ですが...』
『駿があんなに怒るなんて意外だった...、そう言いたいんでしょう?それに、椎田あゆも...』
あゆの名前が出ると、恵は更に聞き耳を立て扉へ押し当てた
『恵が必ず来るように椎田あゆを招待したのは良かった。でも...あの子が倒れた時、恵が介抱したのは予想外だったわ。本来、その役目は山口勇介のはずだった...。本当は婚約発表の時まで薬で眠って、あの子は恵がフランスに発ったのも知らずに新学期を迎える...。そういう計画だったのに...』
(薬...!?睡眠薬か...?)
『薬の分量は正確だったの?あんなにすぐ目を覚ますなんて...』
『即効性のものを使いましたが、何しろ恵様がお近くにいましたので...。それに、あの薬は多量に服用すると彼女の今後に影響します。規定以上の量を使う事は出来ません』
(あゆが倒れたのは睡眠薬を飲まされたせいか...。起きた時に意識がハッキリしなかったのも...)
葵の言葉の後、部屋の中が静かになった
部屋の中の状況が分からない為、無意識に扉へ強く耳を押し付ける
ガシャーン!