第12章 絡まった想い[下]
「あー...、くそ...」
感情が昂って頭が働かない
色々ありすぎて気分も最悪だ...
外の風に当たる為にバルコニーへ向かおうと廊下の角を曲がった瞬間、体に強い衝撃を感じた
「...っ、申し訳ございません!お怪我は?」
「...葵」
ぶつかった相手の名前を呼ぶと、葵はばつが悪そうに表情を歪めた
(何だ...?こいつがこんな表情見せるなんて...)
「すみません。少し急いでいたもので...」
柄にもなくいつもより口調が早い
見るからに、何か焦っている様子だ
「お前...」
「恵様は今からどちらに?」
言葉を遮られる様に問いかけられムッとする
明らかに変だ
滅多に表情を崩さないコイツが...
(なにか悟られたくない事でもあるのか...?)
「...バルコニー」
「そう、ですか...」
「部屋に戻れなんて言うなよ」
「ええ、ごゆっくり」
余裕の無い笑みを見せた葵は今にも駆け出しそうな勢いで俺が来た方へと歩き出した
曲がり角から葵の後姿を覗くと、ノックもしないで璃央の部屋へと入っていく
(あいつがノックもしないで入るなんて...)
葵の行動を不審に感じた恵は、音を立てない様に扉の前まで来ると耳を当てた