• テキストサイズ

恋愛玩具

第12章 絡まった想い[下]



「分からないけど、幸せになってほしいです。雨宮君も武本君も...璃央ちゃんも」

「......!」

「3人の中に私が入る隙間なんて無いかもしれない。私にはどうする事も出来ないかもしれないけど...、わだかまりが残ったまま離れることになるなんて梨奈さんは望んでないはずだから」

あゆの微笑みに梨奈の面影が重なる
掴んでいた腕を離すと、無意識に涙が頬を伝った

「えっ!あっ...執事さん!?」

慌てて目を丸くしたあゆは戸惑いながら葵の手を握った


『葵...私ね、あなたの大きくてあたたかい手が大好き。璃央ちゃんに何かあったら...葵のその優しい手で、必ず守ってあげてね』


いつかの梨奈の姿と重なって、葵は目を細める

その様子をあゆは目を瞬かせ見つめていた

「どうやら...その時が来たようですね...」

「え...?」

「...1週間後、フランスに発つ前に2度程学校へ出向かなければなりません。おそらく...明後日、明々後日になるかと...。学校での手続きが済めば、璃央様にお会い出来るチャンスはフランスに発つ当日のみとなります」

私から手を離すと、おもむろに黒い手帳を取り出し私だけに聞こえる様に小さく呟いた
パタンと手帳を閉じると、執事さんはひとつ息をつく

「フランス行きの便は、11時発を予定しております」

独り言のような呟き
しかし...その言葉は明らかにあゆに向けられているものだった

「引き止めてしまい申し訳ございません。駿様のもとへ...」

「...はい!ありがとうございましたっ!」

あゆは葵へと笑顔を向けると頭を下げ、駿の元へと走っていった

その後ろ姿を見つめる葵の瞳は何かを決意したように真っ直ぐあゆに向けられていた

/ 311ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp