第12章 絡まった想い[下]
とぼとぼと歩いていく後ろ姿を見つめる
ひどく小さく見えるその背中に胸が締め付けられ、泣きそうになった
(私が、泣いちゃダメだ...)
震えそうになる唇を噛んでなんとか堪えると、私は執事さんを見上げた
「...っ!」
今の今まで、僅かにしか感情が見えなかった執事さん
人形の様だと感じた端整な顔が苦しそうにしかめられ、その瞳は真っ直ぐ武本君を見つめていた
「...あの」
私の小さな声に我に返った彼はまた先ほどまでの様に感情の読めない瞳に戻ると、一瞬目を伏せた後ゆっくりと私を見据えた
「え、っと...」
声を掛けたはいいものの、目が合った瞬間頭が真っ白になる
目を逸らす事も出来ずに固まってしまった私を見て執事さんは柔らかく微笑んだ
「早く...駿様のところへ...」
「は、はい!失礼しますっ!」
(そうだ。今武本君を1人に出来ない!)
頭を下げて私は足早に武本君の後を追う
しかし、数歩進んだ所で腕を掴まれ小さく悲鳴を上げた
私の腕を掴んだのは、もちろん...執事さんだ
「駿様のところへと言っておいて、引き止めて申し訳ございません...」
顔を強張らせながら再び執事さんを見ると、強い眼光に息を呑む