第12章 絡まった想い[下]
私も息を潜めて雨宮君を見つめたまま、胸元の拳を強く握った
「俺も合意の上で、婚約を決めた」
やっとこちらに向けられた瞳
その瞳は真っ暗で、冷たく私たちを見据えていた
「あいつは...。梨奈は、もう死んだんだ。死んだ人間を想っていても意味ないだろう...」
「恵っ...、嬉しい!」
雨宮君の言葉に璃央ちゃんが嬉しそうに抱きついた
そんな璃央ちゃんの背中に腕を回す雨宮君
幸せそうな、2人...?
ううん、違う
私には、幸せそうな2人には見えない
雨宮君は...本当にこれでいいの?
暗い闇に沈んでいくような声
冷たくて、光のない瞳
真っ暗な瞳は現実を見ないように必死になって
自分を殺した瞳の様に見える
(やっぱり、2人の間に何かあったんだ...)
また、自分を犠牲にするの...?
なんで...1人で抱え込むの...?
2人の様子を見ていた私と武本君の間に重い空気が漂っていた