第12章 絡まった想い[下]
執事さんが優雅な動きで扉を叩く
柔らかな動作にノックの音まで素敵に聞こえてくる
「どうぞ」
「失礼いたします」
璃央ちゃんも執事さんだと分かっているのだろう
すぐに返事が聞こえて、執事さんによって扉がゆっくりと開かれた
可愛らしい部屋
小さいお洒落なテーブルを挟んで、雨宮君と璃央ちゃんが座っている
雨宮君は頬杖をついて顔を背けていた
「あら。どうしたの?2人共...険しい顔して」
こちらに目を向けた璃央ちゃんはニコリと微笑んだ
そんな彼女の左頬には、大きなガーゼが...
「...璃央。その顔...」
そこは、さっき仮面で隠れていた部分だった
「ふふ...、笑っちゃうのよ。転けた時に割れた仮面で傷ついたの。跡...残っちゃうかしら」
ガーゼの上から頬を撫で、くすくすと可笑しそうに笑う彼女
雨宮君はずっと顔を背けて黙ったまま
なんだろう...
この2人の温度差
婚約発表したカップルとは思えない程、違和感を感じる