第12章 絡まった想い[下]
”婚約”
こんなに、重みのある言葉だなんて思わなかった
胸に色んな思いが駆け巡る
梨奈さんの事はどうなったの?
璃央ちゃんはその為に日本に来たの?
私がまだ玩具だった時...もう婚約は決まってたの...?
「椎田さん...大丈夫?顔色がよくないわ...」
いつの間にか頭を抱える様に俯いていた私の顔を覗き込んできた奈々先生
上手く言葉が出てこなくて、私は黙ったまま小さく頷いた
「なんだよ...、2人して...」
振り絞るように出された掠れた声
武本君が拳を震わせて唇を強く噛んでいた
「梨奈の...命日に...婚約発表だなんて」
「......」
奈々先生が切なげに眉を下げた
「ふざけんなッ!」
いつも優しい武本君が、見た事無いくらい怒りを露にして自分の太股に拳を叩きつけた
「奈々さん、ごめん...。恵たちの所行って来る。あゆちゃん、行くよ!」
手首を掴まれると力強く引っ張られて
周囲の人たちの視線が突き刺さる中、私たちは広間を出た