第12章 絡まった想い[下]
背を向けている恵に気づかれない様に、引き出しからナイフを取り出す
「こんなに愛してるのに、恵はどうして分かってくれないの...?」
恵...あなたは怖いんでしょう?
自分のせいで、周りが壊れていくのが...
両手でナイフを持つと、顔の前で止めた
「いない人間じゃなくて、もっと私を見てよ!!」
叫んだ声に恵が振り返ると予想通り驚いた様に目を見開いた
「お前ッ...!」
「恵は皆に邪魔者扱いされて生きてきたんでしょ?その中で、初めて自分の存在を認めてくれた梨奈の事がそんなに大切?それなら...、梨奈以外は失っても悲しくないのね...」
ナイフを持つ手に力を込める
全ては恵を手に入れる為
卑怯だって言われても何でもいい
昔から彼が欲しかった
恵を手に入れる事が出来るなら、他は何もいらない
左頬にヒヤリと冷たいナイフの刃を当てる
「璃央ッ...、やめろ!!」