第4章 立場と、想いと、[アルスラーン]
それからいく年月流れただろう
いつの間にか私達は歳が
14となっていた
アルスラーン殿下はついに
初陣を果たす事となる
戦についてパルスは無敗を誇っており
侵攻してきたルシタニアを迎撃する
というものだったため
誰もが勝利を疑わなかった
それでも私は心配になり
初陣の前日、殿下にそう伝えると
大丈夫だと微笑まれる
本当なら、戦へ向かう殿下に
無事の勝利をお祈りいたしております
と、いうべきなのかもしれないが
私にはそんな事言えなかった
行って欲しくなかったのだ
言えないこの気持ちに蓋をし
ぎゅっと彼の服の端を掴む
「帰りをお待ちしております...」
今はこれが精一杯
立ち去ろうと手を離すと
腕をとられ、ぐっと引っ張られる
いきなりの事に驚いた私は
前に倒れ込み、目の前にあった
殿下の胸に飛び込む形となった
背中に手を回され
抱きしめ合う形となり
ぎゅっと込められた力の強さに
彼と自分の違いを痛感する
「で...んか...」
「こんな時まで
その呼び方なのだな...」
身体を離すと見えた彼の顔は
酷く切なそうで
でもそれは一瞬だった
ノック音が響き
私は退室を余儀なくされる
この時みたアルスラーン殿下が
私にとって最後見た彼だった
パルスが、
無敗を誇っていたパルス軍が
ルシタニアに負けたのである
王宮にいた私は
すぐルシタニア兵に捉えらた
アルスラーン殿下専属の
侍女だと分かると、
その居場所を吐くよう言われたが
知るよしもない私は何も答えなかった
それが気に触ったのか
ルシタニアに逆らったとして
処刑される事となる
死ぬ時、最後に思い浮かんだのは
母でも、父でも、他の誰でもなく、
アルスラーン、貴方でした