• テキストサイズ

アル戦 短編

第4章 立場と、想いと、[アルスラーン]



彼との出逢いは、
実際のところあまり覚えていない

隣にいるのが当たり前で、
いつか互いに別の人と
一緒になるんだろうなとは
思っていたものの
離れ離れになる事は考えてもいなかった

ある日の事、
彼は王宮へと向かうこととなる

謁見をしにいくのではない

王子として迎え入れられたのだ

そう、彼の名前は「アルスラーン」

アンドラゴラス王を父に持ち
母はタハミーネ様である

私は父からその事を聞き、
あまりにも突然に訪れた別れに
嘆き悲しんだ

しかし、その1週間後

今度は私も王宮へと向かうことに

新しく侍女を雇い入れる事となり
私に白羽の矢が立ったのだ

一介の農民に
なぜこんな話がまいこんできたのか
不思議でたまらなかったものの
理由は誰も教えてくれず
何も知らないまま私は親元を離れた

不安だ、という想いはなく
むしろアルスラーンに会える
という事が何より嬉しく
その気持ちの方が勝っており
今思えば怖いもの知らずな子供時代

でも現実はそう甘くはなく、
私はすぐ侍女としての教育を受け
完璧になるまで彼に会えなかった

お許しがでたのは半年ほど経った頃で
彼の専属としてお仕えせよとの命が出たのだ

「名前!」

「アルスラーン殿下っ!
お久しゅうございます」

「殿下などと呼ぶな
今までの様にアルスラーン、と呼んでくれ」

「そんな畏れ多い事...っ」

彼が以前のように接する事を
望むだろうと思っていた、
しかし今の私にはそんなことは出来ない

なぜだ、という顔で
こちらを見つめる彼に
跪きこうべを垂れる

「貴方は一国の王子であらせられる
そんなお方に侍女の私めが
気軽に接してよい訳がない」

「そ...れは...」

「殿下...
今までのようにはいかないのです」

頭をあげ彼の顔を見ると
酷く悲しんだような表情をしており
でもそれを口には出さず
分かった、下がれとだけ言って後ろを向いた

「はい...」

アルスラーンとの間に
初めて壁を感じた瞬間だった


/ 18ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp