第1章 想いを馳せて [ナルサス裏]
事の発端はいつもどおりの夜に起きた些細なこと
ギーヴ様にもらったキャンドル。
淡い桃色をしたそれは、
心身共に疲れていた私にとって
かなりありがたいものだった。
早速キャンドルに火を灯す
部屋の明かりにするには心許ないが、
この薄暗さがなんだか落ち着く。
「ギーヴ様に感謝しなくちゃ」
ゆらゆら揺れる灯火をみていると、
なんとなく身体が熱くなるのを感じた。
身体がじっとりと汗ばみ、
だんだんと呼吸が荒くなる
「なにこれ…っ」
息が苦しい
なにかが欲しくて
なにかに満たされたくて
今まで感じたことのない渇望に襲われた
そんな時ドアをノックする音が響く
「……っ?」
熱をもったままの身体を引きずり
閉ざされた扉のノブを回した
「ナルサス様…っ」
扉の前にはナルサス様が
明らかに様子のおかしい私をみて
彼の眉が片方あがる
「姫様?如何されました?」
ふらつく私の身体を支えようと腕が伸びた
めくれた袖からみえるそれは
宮廷画家というには逞しくて、
あの腕で抱きしめられたいと不意に思ってしまう
(な、なに考えてるの私!)
そんな私の思いとは裏腹に
ナルサス様の手はしっかりと私の腕をとる
「やっ…」
思わず漏れてしまった声
それを聞き逃してくれる程彼は甘くない
「姫様?やはり様子がおかしい。如何されっ…」
ナルサス様の言葉は最後まで発せられることなく
その前に私は欲望のまま動いてしまった
彼の形のいい唇に自身のを押し付ける私に
驚きからか数歩後ずさった彼
逃げられようが1度手放してしまった
理性が戻ってくるわけもなく、
何度も向きを変えながら深い口付けをしていく
「っ……ん…」
そんな事をしながら、
彼の右手を取り自分の胸に押し付ける
肩で息をするナルサス様の目が
ガッと見開くのがわかった
唇を離し、少し息を整え、口を開く
「…っナルサス様…胸がっ…苦しいのです…
身体が熱くて…なにかが欲しくてっ…」
正体の分からないこの感情
ナルサス様ならなにか知っているのだろうか
この渇望を納める術を知っているのだろうか
そんな期待を胸に彼の目を見つめる
見上げた彼の顔は
驚きと何故か苦しみを含んだようで
凄く辛そう