• テキストサイズ

薄桜鬼~いと小さき君の為に~

第3章 瞳をあけたままで~斎藤一編~


じりじりと対峙している間に、一番背後に居た男が突然時尾の腕を掴んで引き上げた。

一瞬の後、その男の右肘から下がぼとりと畳に落ち、叫び声が響く。

「汚い手で時尾に触れるな。」

抜刀した俺に対し、残り二人の男が色めき立つ。

「平助、時尾を頼む。」

「ああ、分かった。」

男達を牽制したまま言うと、平助が時尾の身体を支えて

「もう大丈夫だからな。」

と、部屋から連れ出してくれた。

「さあ、これで五分五分だけど…どうするの?」

笑顔のまま総司が男達に問い掛けた。

こういう時の総司が一番怖い。

俺はこれ迄の経験上、それを知っていた。

ぴりぴりとした殺気の中、総司も本気で怒っているのだと分かる。

俺と総司の勢いに男達は圧され気味だったが、それでも退く気は無いようで俺達を睨み付けながら抜刀した。

「あーあ……無謀だね。」

総司がまた一歩踏み出す。

そうなってしまえば決着は一瞬だった。


俺と総司が近江屋を出ると、左之と平助に守られるように時尾が立っていた。

「大丈夫だったか?」

其処に駆け寄ると、時尾は俺の着物の袖口を軽く掴んで頷く。

「このまま屯所に戻るのは得策じゃねえ。
 この騒ぎを聞き付けた奴等が襲って来るかもしれねえしな。
 隠れ宿を手配しておいたから、斎藤は時尾と其処へ入ってくれ。
 明日の朝、不知火と一緒に迎えに行く。」

俺は左之の言葉に頷いてから時尾の手を引いてその宿へ向かった。
/ 174ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp