第3章 瞳をあけたままで~斎藤一編~
「…………残念だ。」
俺も少し腰を沈めて左手を柄に掛ける。
一瞬の後、佐伯が踏み込んで来たのと、俺が抜刀したのと……
「一君っ……駄目っ!」
と総司が叫んだのは同時だった。
崩れ落ちた佐伯の身体の後ろに女が一人へたり込んでいる。
その女の全身が紅く染まっていたが、俺の手応えでは佐伯の身体以外傷付けてはいない筈なので、佐伯から噴き出した血を浴びたのだろう。
俺が抜刀した瞬間に、佐伯の背後の路地から出て来たのを総司が見咎めて俺を止めたのだが間に合わなかったのだ。
「君……大丈夫?」
総司がその女に駆け寄る。
女は何故か声を上げる事もなく、無表情のままぴくりとも動かない。
さて…この女をどうしたものかと考えていた俺に、総司が慌てた様子で声を掛けてきた。
「一君……この娘…目が見えないみたいだ。」