第6章 最終話
「ひっ!?」
私が妙な声を出したのと、私が首元に独特の感触を感じたのは、ほぼ同時だった。ぬるりとした、私の中をくすぐるような感触。舌。私の体は、私の意識とは切り離されたかのように、熱くなってくる。舐められた箇所は、熱くはないはずなのに、そこを起点にして、私の体を一気に熱が駆け抜け――――いや、抜けない。熱がそのまま体の中に蓄積されて、上手に息ができなくなってきてる。きっと、すぐにこの熱は私から冷静な思考を奪っていくのかとか、まだ残っている思考回路が、苦し紛れに働いている。
「結衣さんは、私とこんな風に触れ合うのは、嫌ですか?」
艶のある、声。
「っく、あ……ふっ!?」
私の思考回路が答えに到達する前に、首筋を軽く吸われた。きっと私は、嫌とか嫌じゃないとか以前に、セバスチャンさんと、この熱に飲まれてる。私の体の中では、訳の分からない熱が暴れまわっているのに、それとは対照的に、セバスチャンさんの唇も舌も、ひんやりとしている。だから、私の体の中で熱が暴れまくっていても、頭だけはどうにかこの状況に飲まれないで―――最低限の理性と知性を保っていられる、というのが現状。
「おやおや、随分と可愛らしいのですね。ですが、お返事を聞きたいものですね。」
たっぷりと色気を孕ませた声で、私を耳の奥から浸食してくるセバスチャンさん。
「あ―――――ぅ」
お返事どころか、まるで言葉になっていない私の声。セバスチャンさんの生活感のないこの部屋の中に霧散する。
「では、お返事をいただけるまで、問い続けましょう。」