第6章 最終話
ローションを開封してみる。特に、何の匂いもしない。わずかに粘性のある冷たい液体が、私の手の平に垂れた。そのまま、袖をめくりあげて適当に塗りひろげる。セバスチャンさんは、そんな私の様子をじっと見ている。別に私の体はセクシーでも何でもないのだから、見られたところで何もないのはよくよく理解しているけど、流石に落ち着かない。
「背中、塗りましょうか。」
「せ、せな?」
まともな返事をするより先に、またもや抱きかかえられベッドに降ろされる。今回はうつ伏せ。
「ふっ!?」
服と背中の間に、セバスチャンさんの手がローション付きで入り込んでくる。いつの間にか私の手からはローションが消えていた。少し低い手の温度が、火照った体には心地良い。最初はドキドキしたけど、触られていく感触にも慣れていく。大きくてがっしりとした手に触られることが、一種心地良くもなってきた。
「気持ちいいですか?」
セバスチャンさんが、優しい低音で話しかけてくる。ちょっとしたマッサージを受けている気分。
「は、はい……。」
少し眠くもなってきた。
「?」
不意に、セバスチャンさんの手が止まる。
「……?」
何だろう。何か、腰のあたりで手の動きが変わってきた。最初は、軽く触れるように。次第にその動きが腰のラインをなぞるような、執拗なものに変わっていく。薄っすらと感じていた眠気も、瞬く間に薄れていく。嫌でも、私はその感覚に意識を集中させてしまう。
「あの、セバ、ス、チャン、さん?」
やっと絞り出すようにして声を出す。
「はい?」
セバスチャンさんの声に、特に悪びれたような感じはない。私の自意識過剰?その声に合わせるようにして、意識をクールダウンさせる。
「あ、あの、もう結構です。ありがとうございました。気持ちよかったです。だから……」
両手をついて、上体を起こしかけたところで、体の向きを変えられ、そのまま仰向けにさせられる。
「ひゃ!?」
咄嗟のことにびっくりする私。気付けば、セバスチャンさんが私の首元に顔を埋めている。呼吸がダイレクトに伝わってきて、私はそれだけでゾクリと身震いをしてしまう。
「あ、はぁ……?ど、どうしたんですか?」
私の声は完璧に上ずっている。セバスチャンさんの表情は、私からは見えないけれど、何となく、わらっているような気がするのは、気のせい?