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ハコの中の猫 【黒執事R18】

第4章 第4話


「……ぅ、ん、いえ。」
 良かった。声は出るし、頭も動かすことができた。セバスチャンさんと目を合わせる。
「きっと西洋人にとっては、こういうのも挨拶なんです、よね?」
 さすがのセバスチャンさんも、一瞬だけポカンとした表情を浮かべる。よし、一矢報いることができたかな、なんて思ったのも束の間。セバスチャンさんは妖艶に目を細める。
「さぁ、それは時と場合によると思いますが―――――」

「ンっ―――――!?」
 くちゅくちゅと、昼間にしては明らかに度が過ぎた水音が、辺りに響く。もうこれは、少女漫画に出てくるような可愛らしい『キス』ではない。何かを貪るような行為、だった。一旦体を離そうにも、私の上半身は既に固定されている。顔もまた然り。
「ン――――、―――――!」
 そんなことを考えている間に、私のからだはどんどん力が入らなくなってくる。頼みの両腕は、重力に逆らうことすらできずに、だらしなくぶら下がっているだけ。
「っぷ、は―――――!?」
 口を離してもらえたところで何か言おうとする。けれど、声が言葉になる前に、再び唇を重ねられてしまう。何回かこんなことが続くと、頭の中で私の言葉が拡散してしまい、もう何を言いたかったのか、その断片すらも見つからなくなる。
「―――――?」
 私の口の中で、柔らかいものが動く。あぁ、これは――――。口の端から唾液が垂れて、床に落ちていくのが分かる。そんなことを感じている間にも、私の思考回路はじわりじわりとその機能を停止していく。
「気持ちいいですか?」
 突然口を離されて、尋ねられる。頭がボーっとして、私の口からは答えの代わりに唾液がゆっくりと流れ続ける。
「嗚呼、こんな短い時間ではまだ、分かりかねますか?」
 低く笑う吐息の後、再び深く唇を重ねられる。私のからだが震える。ゾクリゾクリとした正体不明の感覚が止まらない。


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