第4章 第4話
言うやいなや、ものすごい勢いでバックしながらコンビニの駐車場から車を急発進させるセバスチャンさん。もはや、私の言葉なんて耳に入っていないに違いない。というか、バックでこんな距離を進む運転を、私は知らない。見たことも無い路地をものすごいドライビングテクニックでぶっ飛ばし、検索した道順ばかりでなく法定速度すらも無視しながら、車は多分北西の方向へと突進していく。気付けばいつか見た猫カフェの駐車場に、私はいた。時計を見ると、わずか三分ほどしか経っていなかったのが恐ろしかった。冷静に考えると、危険致死運転か何かに分類されるのだろうけど、不思議と死ぬんじゃないかとは思えなかった。他の人がこんなことをすると、絶対にタダじゃ済まないと思うが、何だかセバスチャンさんなら大丈夫なんじゃないか、たぶんこんな運転でも私はかすり傷ひとつ負わないに違いないと、この三分間でそう思えたのだ。
「お怪我はありませんか。」
「……ぷっ。大丈夫ですよ。」
思わず笑ってしまった。容姿端麗で博識、運転だってものすごいテクニックを持ってるセバスチャンさんが、猫カフェの為にこんなに必死になるなんて。実は結構かわいい一面もあるんじゃないかな、なんて思ってしまう。本人には言えないけど。
セバスチャンさんは、私の様子よりも猫カフェが気になるようで、明らかにソワソワしている。
「えっとですね、まずは受け付けを済ませましょうか。」
落ち着かない様子で、受付に向かう私の後ろを歩くセバスチャンさん。心なしか、瞳が輝いている。
「ここで、時間コースとか食事メニューとか、オプションなんかを設定して、部屋に案内してもらうんですけど……」
そう言いながら、セバスチャンさんの方を振り返ると、セバスチャンさんの眼はすでに受付にいる看板猫に釘づけになっていた。仕方ないので、適当に私がコースを設定して、部屋に案内してもらうことにした。今日はこの後に予約している客が何組かいるため、一時間のみの利用になるらしい。そういえば、自分がお昼ご飯を食べていないこと、おなかが空いていることにやっと気付き、サンドイッチも注文した。