第4章 第4話
「あっ。」
―――そうだ、思い出した。確かこの辺に、猫カフェがあったはず。とは言え、この様子ならもうチェック済みだろうけど。
「どうしましたか?」
「あ、いえ。この辺に、猫カフェがあったような気がして、それを思い出したんです。」
「猫、カフェ……?」
セバスチャンさんは、何か分からない、といった眼で私を見つめてくる。
「はい、聞いたことありませんか?」
「はい。カフェと言うからには、お茶やお菓子が出てくるのですか?」
あれ、どうやら『猫カフェ』自体が初耳らしい。セバスチャンさんが知らないことを知っているなんて、私、ちょっと嬉しいかも。そんな頭の悪い感情を抑えながら話を続ける。
「えっとですね、喫茶店なのですが、そこには猫ちゃんがたくさんいるんです。お茶やお菓子を食べながら、猫ちゃんたちと触れ合えたり、一緒に遊べたりするんです。といっても、私は前に友達に付きあわされただけで、あんまり詳しくは無いのですが、確かこの辺りにあ」
「案内してください。」
私の話が終わらないうちに、セバスチャンさんが真剣に頼んできた。一度行っただけなので、案内できるほど鮮明には覚えていない。店の名前を辛うじて覚えているぐらいだ。
「えっと、店の名前は……。」
私の言葉が終わらないうちに、セバスチャンさんは近くのコンビニの駐車場に車を突っ込み、ナビに店の名前を入力し始めた。その入力速度はおよそ人間の速度からは大きくかけ離れていた。この人は本当に人間なのだろうか、うっすらとそんな疑問が私の脳裏をかすめたけれど、そんな疑問を差し挟むことは、セバスチャンさんの真剣さが許してくれそうにない。
『ここから、北西に……、……平均所要時間は15分、です。実際の交通規則に従って、運転してください。』
カーナビの合成音声が、端的に情報を伝える。
「ここから北西に……ああ、それなら。」
「申し訳ありませんが、しっかり掴まっていてください。」
「え?」