第3章 第3話
「あの、その、ですね。非常に申し上げにくいのですが……。」
「お金のことなら結構ですよ。」
言い終わる前に、返事が来た。
「え?」
「私が誘ったのですから。」
いやいやいやいやいや、それはもはや悪いを通り越して罪にでもなるのではないだろうか。
「でも……!」
言いかけたところで、セバスチャンさんの長い人差し指が、私の唇に触れる。一瞬の間に、私は何を言いたかったのかすら忘れ、言葉を失ってしまった。まるで、魔法にでも掛かってしまったのかと思うぐらいに。
「男性のエスコートをスマートに受けることも、レディの務めですよ。」
涼しげな指が離れ、私は忘れていた呼吸を再開する。もう、恥ずかしいを通り越して茫然としてしまう。
「は、はぁ……。」
レディだなんて、それこそ言われたことが無い。私にこんなことを言うなんて、実はこの人はものすごく天然なんだろうか。きっとこんな感じで、自然に女性を喜ばせることを言うから、もうこの人はものすごくモテモテなんだろうな。というか、何もしなくても、ただその辺に突っ立ってるだけでも、女性が向こうからやって来るんだろうな。そう、まるで美しい花に、蝶々がひらひらと吸い寄せられるように止まりにくるみたいに。