第12章 雪の中で【氷室 辰也】〈アンケート〉
その時だった。
「Hi、副生徒会長さん。」
柚に声を掛けてくる人がいた。柚は自分のポケットから視線を逸らしては、顔を上げる。そこにいたのは、バスケ部の2年生である氷室がいた。
氷室の爽やかな笑顔は、女子たちからかなりの人気だった。柚は、ペコと頭を下げる。
「あれ?生徒会の仕事?」
氷室の質問に、素直にコクと頷く柚。氷室もハァ~と深い息を吐き出しては、白い息が見える。空気が冷たくずっと居ると、身体の芯まで冷え切ってしまう。
「折角だ。オレも手伝うよ。」
氷室の意外な言葉を聞いた柚は、慌てる様子をみせる。その様子から、氷室はクスと僅かに笑った。
「そんなに慌てなくてもいいよ。」
その氷室の笑い方は、やはり綺麗というべきなのだろう。すると、柚はあることに気付き氷室に質問をする。それは、氷室はバスケ部に入っている為、朝練があるのでは?という疑問を持っていた。
「え?『朝練はないのか?』そうだよ。今日は、久しぶりの朝練がないんだ。」
氷室は、柚に微笑みながら柚が持っていた道具をさり気なく貰い、雪掻きを始める。