第9章 距離感【笠松 幸男】〈アンケート〉
その様子から毎度のこと、柚はクスと笑うばかりだった。笑った姿が可愛かったのか、黄瀬は満面の笑みで柚に飛び付こうとしたところを、笠松によって吹き飛ばさせる。
そんな毎日だった。そして、ある日のことだった。部活が終わり皆が飲み終わったスポーツドリンクを洗っていく柚の姿を見た笠松。
笠松は、不意に柚に話し掛ける。
「わ、悪いな……。い、いつも…1人で……洗わせて……。」
なんとか、言葉を繋げようとする笠松。大丈夫…というばかりに柚は首を左右に振る。柚は、手慣れているためあっという間に、全て洗い終わらす。
「お、お前は……マ、マネージャー1人で大変じゃない……のか?」
笠松は、何を思ったのか分からないが真剣な表情で柚に問い掛ける。柚は、数秒難しそうな表情を浮かべていたが、それでも首を左右に振る。
「『大変だけど、楽しい…』って……そ、そう……か。…良かった……な…。」
柚の笑顔を見たら笠松は、僅かに頬を赤く染めていた。最後らへんの言葉は、だんだんと小さくなっていった。