第8章 届いて…【黄瀬 涼太】〈リクエスト〉
「もしかして、耳が聞こえないんスかね?そういえば、同学年で耳が聞こえない人が居るって聞いてたっスね。」
そう、柚はこの海常高校の生徒だった。耳が聞こえないということで有名になってしまったが、本人は特に気にしたことはない。
手話でしていた柚は、黄瀬に上手く伝わってないことに気付いたのか、少し困った表情をしていたが、すぐに何か思い付いたのかポケットからスマートフォンを取り出す。
全て打ち終わったのか、柚はスマートフォンの画面を黄瀬に見せ付ける。
「えっと…『このボールは、貴方のですか?』そうっスよ…って…聞こえないんスよね…。」
黄瀬は、苦笑をしながら柚に借りてそのスマートフォンに打ち、柚に見せ付ければ、納得したのか柚は満面の笑みを浮かべる。
それを見た黄瀬も思わず、微笑むばかりだった。そして、何かに気付いた柚は、またスマートフォンに打ち始めては黄瀬に見せ付ける。
それを読み上げる黄瀬。
「『初めまして、松山柚です。』そっか、お互いに知らないっスもんね。『オレは、黄瀬涼太です。宜しくっス!』」