第6章 お菓子【紫原 敦】
それはどこか、作って来て…というおねだりの顔だった。
「時間があった時でいいからさ~…作って来てよ~。」
紫原は、プチケーキを抱えながらそんな事を言い出す。紫原がお菓子を食べている顔は、頬を緩めている為、おねだりがとても可愛く見えてしまう。
柚は、クスと笑いながらも紫原のおねだりを聞いては、コクコクと頷くのだった。それを、見た紫原は先ほどとは比べられない程の幸せそうな表情をしていた。
「ん~、ありがと~。約束破らないでよ~。」
紫原は、それだけを言って自分の席に戻るのだった。
次の日、約束通りに柚は時間があった為、紫原の言ったとおりにお菓子を作ってきた。今回は、チョコ入りクッキーだ。紫原は、部活に入っている為…朝が来るのが遅い。
柚は、教室に入り自分の席に座る。クッキーが潰れないように慎重に、鞄を下ろす。後は、約束した本人が来るのを待つだけとなった。
暫くしてからだ、紫原が来たのは…。部活が酷なのか紫原は、疲れた表情をしながら自分の席に雪崩のように崩れながら座る。
それに気付いた柚は、鞄からクッキーを取り出して紫原に近付く。