第9章 居なくなって初めて気づいた
――乾side――
何も言わずに桃城の部屋を出ていった彼女は、どうしてあんなに悲しそうなんだろうか
自分には理解が出来なかった
この合宿に来てから彼女は随分とおかしい
今まで誰にも女だということがバレなかったのに
ここへ来て、忍足、蓮二、幸村と立て続けにバレている
同じチームではないので何があったかわからないが
随分と焦っている様子だ
このままではいずれ全員にバレてしまうのでは?
全国大会前のこの時期にそんなことになれば
彼女はレギュラーから外されてしまう
それ以前に青学にいることすら出来ないのでは?
不二「ねえ、乾。先生から頼まれ事あったんだけど、手伝ってもらえないかな?」
不二の声で考えから浮上する
「ああ、構わないぞ」
そう言うと不二は桃の方へ向き直り、お大事にと言葉をかけた
俺も同じように声をかけると二人で桃の部屋を出た
「不二、頼まれ事とは何だ?」
そう尋ねると不二は思案するような顔をしたあと
乾の部屋に案内してくれないかなと呟いた
俺の部屋?
「構わんが…どういうことだ?」
そう尋ねるが曖昧な返事のみが返ってきた
そんな不二の態度で何か話があるとみた
人に聞かせたくない話の確率は96%と言ったところだろうか
だが、不二は基本的には内面を見せない
動揺?とでもいうのか、彼らしくない
落ち着きのない様子で俺の部屋へ向かっていく
そして彼は俺の部屋へ律儀に
「お邪魔します」
と言ってから入っていく
俺も彼の後に続いて自分の部屋へと入った