第9章 居なくなって初めて気づいた
全員が集まると榊監督から経緯、流れ、結論が説明された
私はまだ収まらない怒りを必死に抑えた
今日の練習はなし
明日は午後からの練習となった
自主トレは自由、怪我人は無理なら見学させること
そんな段取りの説明があった
榊「最後に。もしまた不審者を見たら真っ先に逃げ、私達に連絡すること。捕まえたりなどの深追いは絶対にしないこと」
榊監督の忠告に返事をすると解散となった
今日は散々だと頭の中でぼやくと
真田先輩と施設へ戻った
各部屋に情報伝達へ行くと海堂がふらりと部屋から出てきた
「ちょっ、安静にしてろって」
慌てて駆け寄り押し戻そうとすると、頭上から氷水と呟く声が聞こえた
顔を上げると氷が溶けてしまったビニール袋をぷらんと揺らした
「そーいうのは言えってば!俺が持ってくるから」
そう言うが早いか海堂を部屋に押し戻し、食堂まで氷を取りに行った
食堂の掃除をしていたメイドさんに声をかけるとすぐに用意してくれた
私は急いで来た道を戻り、海堂の部屋へ入った
「持ってきたよ。ほい」
手渡すとお礼をいいつつ目元に当てている
この部屋を出るのは本当に名残惜しい
だが、海堂に休息を与えたいのも本音なので潔く引くことにした
「俺、桃の方行ってくる。何かあったらすぐ連絡して」
自分の携帯を軽く持ち上げそう言うと
ああ、という了承が返ってきたので部屋を後にした
そして私は桃のいるB施設へと向かった
途中、仁王先輩と鉢合わせたので怪我の具合を尋ねたが
仁王「わしの麗しい顔に痣が出来ただけじゃ」
そんな事をいうので
「痣が出来ても男前ですよ」
と冗談で返してから失礼した