第5章 私は幼馴染みとキスをしました
俺は目を開くか悩んだ
が、好奇心には勝てず
結局寝たふりを続けることにした
真琴「事情は多々あるんですが…その通りです。ご内密にして頂けませんか?」
俺はぽかんとするしかなかった
肯定したのか…?
頭が回らない
忍足「わかっとる。誰にも言わへんよ」
俺のすぐそばで内緒話が進んでいる
真琴が女…?一体どういうことなんだよ
俺の耳がおかしくなったわけではない
ましてや、頭がおかしくなったわけでもあるまい
真琴「もし、知りたければ乾先輩から聞いてください。女子テニスの女帝のことが知りたいと言えば多分伝わります」
乾先輩は知っているのか?
確かにデータマンである先輩なら真琴のことを調べていそうなものだ。
ただ、俺は乾先輩から聞くわけにはいかない
忍足「わかった。ほな、俺は竜崎先生んとこに説明行ってくるわ。海堂、よろしく頼むで」
真琴「お願いします」
俺の頭の回転が追いつかないまま忍足さんは医務室を出ていった
今ここで問いただせば教えてくれるかもしれねえ
だが、それでいいのか?
黙っていたのは真琴の方だが…
どうしようかと悩んでいると左手に暖かさを感じる
真琴が両手で俺の左手を包んでいるらしい
タイミングを逃したか
そう思っていると腕に流れる水の感覚
「……っ、ごめんな海堂…俺が、考え事なんて、してた…からっ……」
もう限界だ
男だろうが女だろうが自分のために流した涙を
これ以上放っておけねえ
俺は目を開け上体を起こす
「!!もうだいじょ…」
彼女が言い終わる前に、俺は自分の胸へと彼女を抱き寄せる
女にこんなことできる自分がびっくりだが
今まで男だと思っていたせいかすんなり受け入れられた
「もういい、泣くな…」
それだけ言うと頷く真琴の背中を強く抱きしめた
自分も悩んでいたのがバカらしくなる
男に惚れたかもしれねえなんて思ってたんだから
――海堂side END――