第3章 合宿までの3日間
深く深く、暗いところへ落ちる
底が見えずに段々焦りを覚える
この先に行くべきところはあるのだろうか
このままここにいていいのだろうか
上に行けば違う選択が出来るのだろうか
考えても私の身体は指一本動かない
「かぃ…」
ふと目が覚めた
自分の声が夢ではなく現実で発せられていたらしい
「何言おうとしたんだっけ…?」
夢の内容はほとんど覚えていなかった
私は思い出すことを諦めて携帯に目を落とす
ー04:26ー
日付が変わって、そろそろ陽の上る時間になっていた
「そういえばいつ帰ってきたんだっけ」
土手で眠ってから自宅に帰るまでの記憶がほとんどない
考えていると、ふと服から海堂の匂いがした
記憶も鼻もダメになったかと嘆き自分の服を見ると、制服の上にジャージを重ねて着ている
「………?」
上に着ていたジャージだけを脱ぎ、匂いを嗅ぐとやはり海堂の匂いがした。
鼻がおかしくなったわけではなさそうだ
内側のタグを見ると海堂と名前が書かれている。
「なんで海堂のジャージ着てんの?」
やはり記憶を辿る必要があるらしい
必死で土手でのことを思い出す
「ああ、叩き起こされたわ」
なんとかそれを思い出した。それが出てくると、意外にぽんぽん記憶が戻る
あまりに寒くて海堂にジャージを着せられた
で、腰を支えられながら家まで送ってもらった。と。
自分が自宅のベッドで寝られた理由がやっと解明された
感謝しなくてはなーと思いつつ携帯をもう一度確認する。
「ん?なんか偉く連絡来てるな」
画面のロックを解除し、LINEを開く
個人窓で桃、海堂、不二先輩、大石先輩、英二先輩からメッセージが届いている
青学テニス部のグループ窓ではログが32件と表示されている
昨日の喧嘩でみんなに随分迷惑をかけてしまったんだろう
申し訳ない気持ちになる。
私は一つ一つ開いて読んだ