第8章 お酒の誘惑
「でも、全然実らなかったんですよ。
路上ライブしてても、スカウトの話は来なくて。
色々なオーディションを受けても、悉(コトゴト)く落選して…」
「え、落選⁉︎
花音ちゃんが?」
「はい。
君みたくただ上手い人はいくらでも居る、って言われて…」
要は心が感じられないってこと。
「ただ上手いだけ、かぁ。
そらショックやなぁ」
「しばらく立ち直れなくて、でも路上ライブは欠かさず行ってたんです。
いつかチャンスが訪れるんじゃないかって。
そこへすばるが…」
「すばるくん、見る目持ってるな。
伸びしろを見て声かけたんやろ?」
「だと、良いですね」
「きっとそうやって。
今だけじゃなく、これからこのとも考えて選んだんやろ。
流石やなぁ、すばるくん」