第1章 日向翔陽 『あたしも。俺も。』
「え?このチビが彼氏?
弟の間違いじゃなくて?
悪い事言わないから、今から俺とデートしようよ!」
ナンパ男のニヤつく顔は余計に腹が立ったけど、
繋いだ先輩の手が小刻みに震えていたから、
早く安心させたかった。
「…おい…
すいれんに手を出すな!
消えろ!!」
俺の剣幕に男はうろたえて
覚えてやがれ!とお決まりの捨て台詞を吐いて逃げてった。
すぐに先輩が心配で後ろを見ると…。
ちょ…その顔は反則だって!!
だってさ…
ほっぺた真っ赤にして嬉しそうに笑ってるんだもん。
「先輩遅くなってごめんなさ…」
「もっかい言って…?
あたしの名前…呼んで…?」
うぅ…。
お、俺も暑くなってきた。真冬なのに…。
「すいれん……先輩。」
「もう!!先輩はいりません〜!」
口をへの字に曲げて拗ねる姿を見ると、
歳上だって事忘れちゃう時がある。
そんな可愛い人。